2015年6月6日土曜日

小坂の滝 濁河川本谷中流部まで 最終章

根尾滝の高巻を終えしばし放心状態のぼくたち。ふと我にかえり、前方にルートを探ると側壁は高くないものの高巻をするには少々時間を消費しそうな淵が見えている。最短ルートの水線に目をやると目測で10mほどか完全に水没しないと進めないように見受けられた。昨日はさんざん泳がされ、その冷たい水温にも滅入っていたので少し躊躇したものの水線突破を選択。結果的にはこの日最初で最後の泳ぎとなった。


その後は木漏れ日溢れる平穏な渓歩き。冒険には緩急はつきもの。こんな”緩やか”な時の流れが心地よい。ただそれは長くは続かないのも冒険である。
両岸が狭まるとすぐに岸壁囲む淵(いわゆるゴルジュ)の出現。内心泳ぎたくないな~と思いながら活路を見出すべく弱点を注意深く探る。大きな淵の真ん中に砂地があり浅くなっている。そこに乗りさらに先を探るとうまく岸壁のでっぱりに取り付けそうだ。えいっと一またぎ!難なく水没することなくその難所?を乗り越えることが出来た。だがしかし喜びもつかの間。ぐいっとまがった谷の先に大釜を携えた馬の鞍滝(2段20m)が姿を現した。その威圧感ときたら・・・。あとあと写真を見ると大したことない滝だな。と思うもののその時は”窮地”に追いやられたような焦燥感を感じていた。窮地に追いやられた時人は必至で活路を見出そうとする。退くも勇気、去るも勇気。そんな感じだった。滝を直登しよう。相棒のK山氏はそう提案する。しかし今の自分にこれを直登する技術も根性もなかった。敗退である。

結果的に右岸を高巻きし2段まとめて鉄道路を使った天空のトラバースで越えていった。ここからは正直負け試合である。次に下方に見えている滝にいったん降りてみるもやはり登れない。いや登れそうだが登る気力が無い。とにかく今は谷から脱出したいその一心だった。
高巻きを駆使し部分的に急斜面は懸垂下降を用いていったりきたりしていると取水堰堤に飛び出した。あ~ようやく解放された。そんな気分だった。取水堰堤から管理経路を経て車が通れる林道に出る。安定したこの違和感のある道に安ど感すら感じる。前日にデポしたK山氏のジ〇ニーに向けて林道を2kmとぼとぼ歩く。馬鹿話をしながら旅を振り返り余韻に浸る・・・。
残り数百メートルだったか、冗談で、車のカギ無かったら歩いてがんだてまで帰らなかんね!と僕。その一言を受けてワンテンポおいてK山氏の表情が豹変した。 その刹那はたと立ち止まりザックの天蓋をくまなく探す。そこにとどまらず本体も探し尽くすとひとこと「忘れた・・・。」冗談が真実となった瞬間だった。車での下山が夢と散った。ここからは自力下山しかない。携帯電話を持たない(持っていても電波は通じない)僕らに残された選択肢はそこから10km先の濁河温泉を目指し上るか20km先のがんだて公園をめざし下るか。その時は登りでもいいから近い方へ行こうと即決。閉ざされた車の腹に荷物を潜り込ませ飲み物とタバコとライターをポケットにいれて歩き出す。「ま、なるようになるさ」その後の事はあまりはっきりとは覚えていない。ただ放出され続けるアドレナリンでほぼ無意識で歩き続け結果として10km先の濁河温泉・旅館御岳にたどり着いていた。

おやじの車にゆられがんだて公園についたのは19時を回っていた。結果的に迎えに来てもらったのだ。実家の近くの沢だったのでできた神業。感謝が尽きない。その後の僕たちの沢タビに「鍵よし!」の指さしチェックが出発前の点検の必須項目になったことはいまさら言うまでもない。
はじめての沢泊は最後にとっても楽しいおまけつきでした。おしまい。また気が向いたら次の冒険の話をするとしよう。それはまた別のお話・・・。(森本レオ・王様のレストラン風)

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