2015年9月30日水曜日

備忘録・甲斐駒ケ岳尾白川黄連谷右俣遡行 その1

視野を広げる旅。毎年恒例となった秋の沢旅。今年は今までにない挑戦的な沢登をチョイス。
黄連谷。その名は沢登を志した当初より目にしている名渓中の名渓。このブログでも時折触れる沢のグレーディング。それによれば(文献にもよるが)3級上から4級といった上級者向けの沢登コースであることがわかっていた。そのため幾分不安はあった。いや、不安だらけだった。

今回の山行はいつものメンバー。やまぴ&K山氏の3人トリオ。初日は仕事の都合で遅れて東京から合流のK山氏を待つ形で余裕のスタート。スタート地である山梨県北杜市白州町はかの有名な南アルプスの天然水のボトリングの採水地。&サントリーウイスキー”白州”の蒸留工場がある名水の本場である。てなわけでちゃっかり工場見学&白州のショットグラスをゲット!前夜祭はスーパームーンを眺めながらの月見酒!出だしからサイコーです。
さて、ここで終われば一般観光で終わりです。そうは問屋が卸さない。明日からの下見もちゃんと済ませていますよ~。日が変わって遡行初日。竹宇駒ケ岳神社に1台車をデポり出発地点である尾白林道のゲート(日向山登山口付近)へ移動。ジャラ類(登攀具など)を身に着けいざ出発!!
と、思いきやK山氏がぼそっと「ザイルは?」いや~幸先いいですね。竹宇駒ケ岳神社にデポった車に残置してきたらしい。回収に30分。この出遅れが功を期すとは・・・。
入渓までは長い林道歩き。昔は探勝道として利用されていたらしいが今は見る影もまばら。人智など自然界においていかに無力なものかと思い知るような光景の連続だ。
そんな林道も終点に息づまる。そこから谷に向けてFIXロープ(固定された残置ロープ)が設置してありそれにしたがって川床へ降り立つ。








 尾白川の印象は黄緑!これがかの有名な?尾白(おじら)グリーンか!南アルプスの天然水は天然の着色料で黄緑色だったんですね。深い釜を擁するいくつもの滝群はどれも簡単に直登できる。途中遠見滝を巻を右岸に取ったがため5mほどの懸垂下降を強いられる。これはリードである僕のミス。反省です。(以降チームメイトと協議しながら巻道を選択していった・・・。)
遠見滝を巻きおえると黄連谷と尾白川本谷との出合い。ここからが本来目的とする黄連谷なわけです。出合いの滝もきわどく右岸のトラバースで攻略。高巻きも随所に独特のいやらしさを持ち合わせていた。そうこうするうちに本日一の大滝、千丈の滝に出合う。60mはあろうかという4段?滝。最下段の下に立ちルートを探す。するとK山氏が「あれ」と指差す。その向こうにはBDの新しいメットが残置してある。いや、残置ではない・・・。メットをよく見ると大きく割れて破損している。 「あ~」色んな想像はできる。ただ吉兆ではないことだけはわかった。その後の高巻きの途中にも自然に帰りつつあるアイスアックスを発見。「なるほどそういう場所か」と変に納得しながらなおも遡行する。そうここは”死”が当たり前に存在する谷である。そう思い知らされる出会いだった。




高巻きを終え間髪入れず坊主滝(40M)出現。写真で見るよりもスケールは大きく直登など考えられない代物。セオリー通り左岸のルンゼより高巻く。踏み跡を見失わないよう、滝を巻すぎないよう辿るとちょうど落ち口ぴったりに高巻きすることができた。比較的間違いの多い高巻きだが、巻のセンスは小坂の滝に磨かれているためなんら苦労はない。(おごりすぎか)坊主の滝を巻終えるといよいよ本番。眼前には高い位置から滝が落ちている。「あれが右俣への入口か・・・登れんな。」そう絶望しながら若干高度を上げると向かって右側に滝が。

これがいわゆる右俣出合の15M滝だった。ここから登攀の始まりである。とはいえリードでロープを出すほどでもないしセカンド以降をビレイする様な場所では無かった。そのままスイスイ登り後続を待つが一向に来ない。「まさか!?」と思い滝上の残置ハーケンにセルフビレイ(自己確保)を取り下流を覗き込むと滝手前のスラブ状の滝(斜めの岩肌に水が垂れる滑りやすい場所)で難儀している模様。落ちてくれるなと祈りながらもトップで登ったのにザイルを担がなかった自分を呪った(降りる事すらできない)しかしなんとか鬼門を乗り越え全員右俣に降り立つことが出来た。時間は14時。この先に待ち受けるであろうはこの谷の最難関?高度差200Mに渡る奥千丈の滝である。そこに突っ込むか否か・・・。急峻な谷ではすでに日はかげり夜が近い。そこを無理して最難関につっこむよりも翌日気力も体力も溢れているであろう時間に通過すべきと割り切り今夜はここでビバーク。今宵も明るい月に照らされながら不安を胸に眠りにつく。明日無事に生きてこの谷を抜けられるのだろうか・・・。不安で寝つきは良くなかったことは言うまでもないだろう。



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