2015年10月13日火曜日

小坂の滝 兵衛谷完全遡行編 その3

御嶽山の噴火以来、兵衛の源流域への懐古心が強くなっている。兵衛谷の源頭は現在入山規制エリア内にあるため立ち入る事が禁止されている。ただ二度と行けない場所ではない。いつか規制解除の暁には必ずもう一度訪れたいと思っている。兵衛の最初の一滴を求めて再び・・・。



兵衛谷遡行2日目は標高1600m付近からのスタート。今日は標高2800mのサイの河原まで一気に1200m高度を上げるハードな工程。早朝6時早めの出発を切る。
兵衛谷大橋上流は再び発達した溶岩流のゴルジュ。水線に執着し泳ぎを交えた突破も想定できるが右岸の草付をトラバースした方が随分と早い。時間を優先する僕たちはもちろんトラバースを選択。一気にゴルジュ帯を通過する。


ゴルジュ最後の大釜5m滝を左岸より直登すると渓相は穏やかになる。いくつかの小滝と渡渉を繰り返しながら上流に進むと長沢との出合に5m滝がかかる。過去にK山氏はこの滝の上で尺イワナを釣り上げている。標高は1800mこんなところにも立派なイワナが住み着いているのが驚きだ。
ここからは美形滝のオンパレード。中でも5m程度の斜瀑は際立って美しく僕のお気に入りの滝の一つだ。


右岸岩壁より噴出した白い滝(10m)を越えるとほどなくシン谷・尺ナンズ谷の二股に出る。
この二股にはそれぞれシン滝(40m)、尺ナンズ滝(30m)が懸る。ふたつをまとめてパノラマの滝と称する。兵衛谷はここで名前を変え本流であるシン谷に進路を取る。
シン滝40mは大高巻だ。右岸より急登し壁がたったところにうまくトラバースする踏み跡がある。それを辿り滝落ち口ピタリに出る事が出来る。この先百間滝までは直登できる滝ばかり。楽しいシャワークライミングでガシガシ高度を稼ぐ。



百間滝(50m)何度訪れても圧巻だ。僕自身この滝より上は未体験ゾーン。K山氏にとっても初の百モ間滝との対面だった。
そのスケールの大きさにしばし見とれてしまうがこれを越えなければ前には進めない。右岸は絶壁。どう見ても高巻きラインは左岸だ。滝もデカイだけに高巻きもデカかった。登れそうな斜面を岩壁向けて斜上。岩壁基部をトラバースするが途中ガレガレの気持ち悪いトラバースがある。慎重にわたり何とか高巻きに成功。標高2000mを過ぎての大高巻きは気力も体力もそぎ落とす。


百間滝の上にも間髪入れず20mほどの直瀑が。こちらは踏み跡をたどり右岸より高巻いた。
谷はいつの間にかガレガレのゴロゴロ。ふんずけると動き出す新しい転石で埋められた急な谷底をひいひいいいながら登る。感覚的には沢登というよりか登山に近い。なが~いゴーロを気が滅入るほど歩いていると突如として10m滝が眼前に現れた。しかもその滝を前衛として多段の滝を擁する絶壁が行く手をふさいだ。


さぁてどう超えるか・・・。とりあえず一段ずつこなしていくしか手はなさそうだ。最初の10m滝は左岸のガレルンゼを詰めると意外と簡単に落ち口に出られる。そこに待ち受ける10m滝は美形!
縞模様の岩壁に筒状を落ちる一文字滝。しかも滝壺は透明度の高いブルー。標高2300m付近でこのような美しい滝に出会えるとは・・・。感無量。しかしながらここはかなり急峻な場所。巻道を探すとかなり立ったルンゼの中に弱点を見出す。とはいえ一部垂直に近い部分もある。ダケカンバの幹をつかみながらモンキークライムで上がる。標高が高いので無論息切れ。”ほうほうのてい”で巻き上がりへたり込む。ほんとしんどいです。高巻き。


ヘロヘロになりながら垂直ゴルジュともいうべき多段30mを越えるとまたもや延々と続くゴーロ帯。急傾斜のゴーロ歩きは見た目以上に体力を奪われる。昨日からの蓄積された疲労も助けペースは上がらない。しばらく歩き続けると眼前に岩壁が。壁か、滝か・・・。いずれにせよ厄介な代物に間違いない。だんだん距離を縮めていくとそれが滝であることが分かった。神津の滝。まさにその滝だった。


写真集でしか見たことが無い、生で見たい滝のひとつであった神津の滝。今目の前にその滝が現れた。疲れた体に感動で電撃が走る!サイコー!!たぶんアイドルファンが握手会に参加して本人と握手した時と同じ感覚(?)なのかもしらない。

しかしアイドルのように優しくはないのが自然の掟。森林限界付近という事もあり背の低いブッシュに悪戦苦闘しながら巻き上がる。途中対岸を望むと今にも動き出しそうな荒々しい岩壁が。ここはまだまだ”若い”地層。変化の激しさが肌に感じられる。


神津の滝を高巻いてもまだまだ終わらない。前方にはまたも岩壁が・・・。もう高巻きは勘弁!と思いきや近づいてみるとなんとか登れそうな傾斜。取りついて見れば簡単に登る事の出来る多段の滝。この標高で果敢にもシャワークライミングに挑戦。冷たい谷風が吹きあがるがそれすらも心地よく感じる。クライマーズハイか(?)


ふと周りを見渡すと火星のような様相になってきた(火星は行ったことない)いよいよ源頭は近い。
ガレガレのほとんど伏流した谷筋を半ば無心で歩き続けると青空に左右を覆っていた背の高い岩盤が交互に交わり途切れるのが見えた。その交点には紛れもない滝がかかっていた。これが世にいう日本最高所の滝か!!

今日はここで止め!最終章にこうご期待♪



0 件のコメント: