2015年10月17日土曜日

小坂の滝 兵衛谷完全遡行編 最終章

長い年月この日が来るのを待っていたような気がする。日頃慣れ親しんだ小坂川。幼いころにふと抱いた感情。この水はいったいどこから流れてくるのだろう。その答えはここにあった。

ここは月か、火星か・・・。そこには非日常の風景が広がっていた。無機質な荒涼とした砂漠か、異星の地に降り立ったかのような光景の中に青空が映える。

源頭部付近の渓相



2750m兵衛谷最初の滝にして遡行最後の滝。落差10m程度の直瀑。今にも涸れそう、またはこの標高でこれだけの水量。両方の表現が出来るだろう。(あまりにも感動して写真すらとっていない)

この滝を最後に兵衛谷は谷ではなく湿原に変化した。岩間を滔々と流れる細い水音。傾斜もわからぬほどなだらかなその源流帯に立つとそこは霧の中だった。

賽の河原と呼ばれるその場所は三途の川のほとり。無数のケルンがたちならびまさに魂の集まる場所。辺りを包む霧も助けて幻想的な雰囲気だ。

賽の河原へ詰め上げた


左右の果てが分からない広い平原をコンパス頼みに方角を決め歩き出す。奇跡的にも迷う事もなく、ほどなく踏み跡と合流した。紛れもない御嶽登山道である。

この瞬間に唐突にも僕たちの兵衛谷遡行は終わりを告げた。ただ今は余韻に浸ることなくとにかく下山することに頭が回っている。
賽の河原から摩利支天乗越を越え五の池小屋へ。さすがにヘロヘロなのでしばし小休止。
主のI川氏は今日も不在。僕たちが遡行するときはいつも入れ違いのようだ。

泊まっていきたいほどの快適な山小屋だが後ろ髪ひかれつつ出発。下山途中8合目を過ぎた辺りでI川氏に出合う。歩荷のようだ。シーズン中何度も山頂と下界を往復する彼の体力と根性には脱帽だ。

通いなれた御嶽登山道は高速道路のよう。すたすた降りてあっという間に登山口に飛び出した。
ここに僕たちの兵衛谷完全遡行は貫徹した。濁河温泉市営露天風呂につかりながらようやく余韻に浸る。

見慣れた三の池


2日間ともに10時間を越える奮闘に体はボロボロ。温泉から上がり根尾滝駐車場にデポった車を回収すべく下界向けてドライブ。約1時間ドライブで根尾滝駐車場に到着。久しぶりに車から降りると姿勢が固まっておりガチガチに!やっとの思い(?)で車を回収し帰路へつく。

ここから先の事は正直あまり覚えていない。というか遡行を終了した今どうでもよい。

長い年月を費やした兵衛谷完全遡行への道。そして駆け足で駆け抜けた2日間の完全遡行。全てが年輪となって僕たちの魂に刻み込まれていく。そんな魂の遡行。これぞ兵衛魂。
(※ちなみに相棒のK山師の鉈には”兵衛魂”の銘が刻印されている。)

この先こんな魂の遡行をいくつ繰り返すのか。分からない。その度に小坂の瀧魂のしわは増え厚みが増して行くのだと思う。僕のライフワーク。これからも小坂の山・谷(たまに浮気して他のエリアも歩くけど)を歩きまわりまだ見ぬ”魂の記憶”を探して冒険を続ける事でしょう!まだまだ奥が深い!だからやめられない小坂の谷。

小坂の瀧魂。まだまだ発信し続けます。命ある限りですけどね。


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